2014年11月10日、日本の名優・高倉健さんが83歳でその生涯を終えました。
映画鑑賞が大好きな私ですが、
特に「健さんファン」という訳ではありません。
しかし、この訃報を耳にした時、
驚きと寂しさが込み上げてくるのを感じました。
作品の素晴らしさもさることながら、
寡黙で孤高、ただひたすら自分の芝居を貫くその姿に、
その存在に、自然と大きな影響を受けていたのでしょう。
印象に残っている作品は、
「八甲田山」「野生の証明」「ブラックレイン」「鉄道員」です。
言葉でなく、「間」「立ち居振る舞い」「眼差し」で
熱く強烈なメッセージを届けてくれた健さん。
私の伝達スタイルとは異なるアプローチに、
憧れと尊敬の念を抱くと共に、
「健さんのように信念を持って、更なる研鑽と経験を積み続けよう―」
そんな、引き締まる想いを抱いた2014年11月でした。
さて、今月のキーワードは、
人と組織の成長を加速させるために意識したい言葉、
『一張一弛(いっちょういっし)』
をお送りしたいと思います。
『出典は、中国古典の一つ「礼記(らいき)」。
「張りて弛めざるは、文武も能くせざるなり。
弛めて張らざるは、文武も為さざるなり。一張一弛は、文武の道なり」
弦を張るだけでは弓の力を引き出せない。
張ることなく弛めたままでは方向を見失う。
弓の力を最大限に発揮するには、
時には張り、またある時は弛めるのが良い。
転じて、政経も人の成長も、
時に応じて厳格さと寛大さの両方が必要、という意味。
緊張感の中で常に頑張りすぎると息切れしてしまう。
逆に緩みすぎた生活から真の満足感は得られない。
仕事においても、プライベートでも
「一張一弛(=メリハリ)」が大切。
それが大きな成長と幸福をもたらす要諦ではないか。
緊張と緩和、厳しさと優しさ、順境と逆境、勇気と恐れ―。
相反するようだが実は一体のエネルギー。
人生においてどちらも必要なもの。
どちらかに偏ったモノの見方や考え方、
行動に囚われることなく、
自由で素直な心でその両面を意識し、受け止めて歩んでいきたい』
皆さんの仕事やプライベートには「一張一弛=メリハリ」がありますか?
14年前の夏、私は頑張りすぎて心も身体もボロボロになり、
「急性鬱」のような状態になった経験があります。
転職して間もない時期で、
周囲からの期待に何とか応えようと昼夜を問わずに働きました。
体力にも精神的にもそれなりに自信があったし、
「結果が出ないのは自分の努力や頑張りが
足りないせい、こんなはずはない!」と強く思っていたので、
自分に鞭をうち続けることで
「成果を出せないみじめな私」と向き合うことを必死で避けていました。
結果は…、仕事で成果を出せないだけでなく、
情緒不安定と体調不良で1ヵ月ほど引きこもる状態に陥ってしまいました。
幸い、上司と周囲のサポートのおかげで
「できない自分」を受け入れ、
ゆっくりと一歩一ずつ前に進むことを
「自分に許可する」ことができ、
それ以降は仕事も不思議なくらい好転していきました。
―夢や理想、目標に向かって懸命になるのもいいが、
いつの間にかそれらに追い詰められて(囚われて)いないか確認しよう。
時には立ち止まって深呼吸をし、自分を労う時間も大切にしよう―
生きていく上でとても大切なことを学ばせていただいた貴重な体験でした。
『打てない時期にこそ、勇気を持ってなるべくバットから離れるべきです。
勇気を持ってバットから離れないと、もっと怖くなるときがあります。
そういう時期にどうやって気分転換をするかは、すごく大事なことです。』
― イチロー(日本 プロ野球選手)
『人間はロボットじゃないんだから、疲れれば休みたくなるんだ。
そういう時は潔く休めばいい。
怠けたい気持ちが湧き上がったら、無理強いしてもいい仕事はできないよ。
どういう気分になればやる気になるのか、人それぞれつぼがあるからね。
自分で自分のこと、うまいことその気にさせる技をもつことさ。』
― 黒澤 明(日本 映画監督)
「一張一弛」―
一所懸命に取り組むことも大切なら、
思いっきりリラックスする時間も同じぐらい大切。
仕事においても、
プライベートにおいてもスイッチオンとオフを意識してみよう。
そのメリハリは、あなたに心身の健康と人生の豊かさを運んできてくれるはず。
緊張感の中で頑張りすぎるエネルギーは自分も、
あなたの大切な人も傷つける危険性がある。
だらだらと小欲に流され続ける生活は、
あなたから成長と大切な絆を奪ってしまう可能性がある。
ここぞという時には懸命に、そして時には怠けて。そうやって充実した人生を歩んでいこう。 |