「“型破り”という言葉がありますが、
これはしっかりとした“型”があるからできること。

基礎の“型”を身につけるには
日々の鍛錬と努力を怠らないことが必須である。

こうしてできた“型”が基礎にあるからこそ、
新しいやり方が生きてくる。

努力をすることもなく、何の力もないまま型を破ろうとすると、
実は“形無し”だった…
ということになりかねない」　　　　　　　　　
― 第１８代中村勘三郎 至言 (12月5日逝去 享年57歳）

２０１２年も残すところあとわずかとなりました。
皆さまにとって、２０１２年はどんな一年だったでしょうか。
私にとっては、数多くの新しい出逢いや旧友との再会に恵まれた充実した一年でした。

しかしながら、日本を取り巻く世情は相変わらず慌ただしい状況が続いています。
これまで何となく先延ばしにしてきた「課題の山」が
いよいよ我慢できずに「噴火」の時期を迎えている感じがします。

２０１３年を素晴らしいターニングポイントとするために、
この年末年始、しっかり準備をしておきたいものですね。

さて、今月の言葉は、２０１２年を振り返る際に意識したいキーワード、
『克己心と励ましの力（こっきしんとはげましのちから）』
をお送りしたいと思います。　　
「克己」とは、論語の〈子（し）曰（いわく）、克己復礼を仁となす〉にもとづく言葉。
弱い自分、甘い自分に打ち勝つ意味。

仕事における「克己心」とは、
客観的な視点で己の仕事を厳しく評価しつつ、
決して自分を否定するのではなく、
自分の力を信じて心身とスキルを磨き続ける姿勢と解釈できる。

「励まし」とは、気持ちが奮いたつようにしてやる、元気づける、力づけること。
「克己心」を持って、常に自分を磨き続ける努力があるからこそ、素晴らしい仕事、
大きな成果が生まれる。しかし、自分ひとりで「克己心」を維持していくことは難しい。

周囲からの「励まし」がいる。「励まし」によって、
諦めたくなる弱い自分に立ち向かう勇気が湧いてくる。心が奮い立つ。

「克己心」ある活動と「励まし」の連鎖。
―これこそ仕事に本気と情熱をもたらす秘訣ではないだろうか。

冒頭でご紹介したのは、今月5日にお亡くなりになった中村勘三郎さんの言葉です。
強い克己心をもって芸を磨き続け、
常に観客への感謝を忘れず精進する立ち居振る舞い…。
多くの感動を与えてくださった真のプロフェッショナルのあまりにも早すぎる死が悔やまれます。

仕事において達成感や充実感、成長感を感じることができた時とは、
「克己心」を持って逃げずにやりきれた時であったと感じます。

初めてコンサルティング案件のプロジェクトリーダーを任された経験―
不慣れで連日徹夜状態でフラフラでしたが、
クライアントの社長と本気でやり合い、
最終的に成果が出始めていると褒められた瞬間は、
涙が出るほど嬉しかった。

組織をマネジメントする立場になり、
メンバーとチームのビジョンを真剣に語り合った経験―
耳の痛い話も含めて言いたいことを言い合い、曖昧な妥協はせず、
全員で明確なビジョンをつくり込めたとき、
深い達成感と何としても形にしたいという想い(勇気)がみなぎってきた。
・・・などなど。このような貴重な経験一つひとつが、
今の「私」と「仕事」の源となっているのです。

そして、苦しい状況で諦めそうになったとき、倒れ込みそうになったとき、
支えてくれたのは仕事の仲間、上司、友人、お客様でした。
「石月ならできる！大丈夫！」という「励ましの言葉」と深い「愛情」があったからこそ、
苦難を「かけがえのない経験」とすることができたのです。
私が今あるのは、このような方々のおかげ。本当に、心から感謝しています。

たとえ確証がなかったとしても相手を信じて「励ます」
〜それが「克己心」ある勇気ある言動につながり、成果を生む〜
その成果は周囲の人たちの役に立ち、
周囲の人たちは更に期待と励ましの言葉を送る・・・
こんな「つながり」を現場にたくさんつくれたなら、
きっと素晴らしい社会になるだろう。

2012年ももうあと僅か･･･
皆さんは今年、
自分を信じて、 「克己心」を持った言動と体験をできたでしょうか？
誰かを「励まし」、一歩踏み出す勇気を与えることができたでしょうか？