―2012年3月11日で東日本大震災から丸一年が経過しました。
あっという間に感じた方、非常に長く感じた方、
その想いは様々であったと推察いたします。
多くの企業が年度末にあたり、学生にとっては卒業と進級学に向けた
準備の時期にあたる3月。
想いは様々であるものの、新しい年度に向けて、躍動する春に向けて、
しっかりと自分と向き合い、十分に準備をして新たなスタートを切りたい時期です。

さて、今月の言葉は、新たなスタートに向けて意識したい、
『自尊と自律』
をお送りしたいと思います。　　
―「自尊」とは、自分の人格を大切にすること。
また、自分の思想や言動などに
誇りを持ち、自分の存在そのものを尊ぶこと。
「自律」とは、自身の思想や価値観を明確に持ち、
それを基として主体的に行動すること。
かつ、周囲との共生を意識し、自らを律する言動を行うこと。

「自尊の心」は生きるエネルギーとなる。「自尊の心」があるからこそ、
他者の 存在も大切にできる。
「自律の心」があれば、大切なものを見失わず、
良い方向 にエネルギーを向けることができる。
「自律の心」は、周囲との共生を可能とし、
よりスピーディーに、より大きな成果を獲得することができる。

3月9日に内閣府から発表された統計によると、
平成23年度の自殺者は30,651人で、
対前年で1,039人減少したものの、
残念ながら14年連続で3万人を超え続けているとのことです。
奇跡的に授かった尊い命を自らの手で絶ってしまうことは、
本人でなければ理解できない過酷な理由があるにせよ、
本当に悲しい出来事であり、何とかして止めなければ…と強く思います。

このような環境下だからでしょう。
10年ほど前から「メンタルヘルス対策」「ストレス耐性強化」といった
テーマの教育研修の依頼が増えてきて、そのニーズは未だ衰えていません。
私自身も、8年ほど前から、
当該テーマの教育研修を様々な業種業界に対して提供し続けています。
これまで「メンタルヘルス対策」をテーマにした研修を
2,000名以上の方に対して実施してきておりますが、
そこで感じるのは「自尊の心」が弱っている…ということです。
それは、単に自分に自信がないということでなく、
自分の存在そのもの（=自分に対するイメージ）を
否定的に捉えてしまっている人が想像以上に多いということです。

殆どの場合、「ポジティブ表現よりネガティブ表現の文章数が多い人」
の割合が高く、時には80％以上がネガティブ派であることも珍しくありません。
こうなってしまう原因は、幼少期の辛い体験であったり、
社内の人間関係であったり、会社の風土であったり、
そもそも日本の教育システムそのものにあるのかもしれません。
いずれの原因にせよ、「自尊の心」が弱ってしまう状況は、
自分の力で切り拓こうとする勇気を失わせ、
他者に対する警戒心を強め（時に攻撃的となり）、
結果として他責の意識と目先の事象に囚われた言動を生み出すことになります。
「自律型人財の育成」が叫ばれ続けて久しいにも関わらず、
なかなか進んでいない現実を直視すると、
「自律の心」を育む前に、若しくは同時に、
「自尊の心」を育むアプローチが必要なのではないでしょうか。

独立の気力なき者は必ず人に依頼す、人に依頼する者は必ず人を恐る、
人を恐るる者は必ず人にへつらうものなり　　　　　　　
―福沢諭吉 『学問のすすめ』より

人から嫌われることを恐れるより、欠点はあってもいいから、
それ以上に魅力のある自分になったほうがいい
―音楽プロデューサー　秋元康

日本の人口は今後、減少の一途をたどります。であるからこそ、
一人ひとりが「自尊と自律」の心を育み、強い「個」となり、
そして真の「絆」を創っていくことが必須ではないでしょうか。
はじめましょう。まずは自分から。そして身近の大切な人たちとの「絆」から。
皆さんは日ごろ、自分自身を大切にしていますか？
自分にプラスのイメージを持てていますか？
自分の価値観や考え方に正直に、周囲との協働を意識した言動を行っていますか？