「未来？そんなものはない！　
これから頑張ります？
“これから”なんかねえ！
あるのは『今』と『ここ』だけだ。
『今、ここに集中する』ことから逃げるな！！」

これは、私が師からよく「喝」を入れられていたフレーズです。
今月は、このフレーズのベースである、
『前後裁断（ぜんございだん）』
という言葉をご紹介いたします。　　

―不安や迷い、憂いとは「時」がつくるものである。
過去と未来をつないでみるから
不安になり、行動が停滞する。
過去にこだわるから、行動が縛られる、制限される。
自身の前後(過去と未来)を裁断し、
「今、ここ」に心を向けて集中することこそ、
本当の意味で「生きる」ことであり、
結果として、より良き未来を創るのである。

―皆さんは充実した『今』を生きていますか？
私は職業柄、過去の振返りや未来を計画するご支援を多く行います。
これまでの活動で何が良かったのか、悪かったのか。
これから何を目指していくのか、どのようなリスクが想定されるのか、
それらを踏まえてどんな行動計画で進めていくべきなのか…検討に検討を重ねます。
皆さんもこのようなことを（ここまで硬い感じではないにしても）
日々行っているのではないでしょうか。

未来を描き、目標を持って毎日を過ごすことは大切なことです。
それは時に生きる希望となり、日々の生活に充実感をもたらします。
しかしながら、まだ来ぬ不透明な未来に囚われ、
不安から、ただ悩むだけの日々を送ったり、
未来のための「備え」に大半の時間を費やしているとしたら、
確かにいつ生きているのか（いつ「生」を実感しているのか）分かりません。

私の先輩で、5年前に事業に失敗し、数億円の借金を抱え、
本当に「一家心中をしようか…」という状態から復活され、
現在は大成功して、本当に充実した毎日を過ごしている方がおられます。
先日、その先輩に、「何故そのような状態から立ち直ることができたのか？」を
尋ねてみる機会がありました。

すると、先輩は、

「とにかく今、ここに集中して、
目の前の人に、仕事に心を向けて懸命に対応していたら、
色々なことが好転し始めたんだ。
助けを申し出てくれる人が現れたり、
だいぶ前に営業していた先から声がかかったり…。
本当に奇跡が起こったみたいだった。
石月君、“今、ここ”だよ。
そうすれば、色々と難しい状況はあると思うけと、最後には絶対に良い方向にいくよ。」
と話してくれました。
実体験に基づくその本質的な話に、私は感動し、また、自省しました。

私は、目の前にいる人に集中し、真剣に向き合っているだろうか？
私は、今行っている仕事を大切にし、感謝し、全力を出し切っているだろうか？
私は、今この瞬間の「嬉しさ」「ワクワク感」「悲しみ」といった
自分の感情を味わえているだろうか？
本当に充実した毎日を過ごし、
かつ素晴らしい未来を形づくるための秘訣が、ここにあると感じました。
未来のありたい姿や目標は見据えつつも、今の意識と行動に集中する…。
その連続体がより良き未来を形づくるのだと。

ここ10数年の日本は、
「過去のしがらみ、慣習」と「不透明な未来」に囚われすぎ、
社会全体が元気と活力を失ってしまっているように感じられます。
まずは、私たち一人ひとりが、「前後裁断」し、
「 今」に集中した行動を起こして参りましょう！！

過ぎ去ることを追うなかれ。いまだ来らざることを思うなかれ。
過去はすでに捨てられたり。未来はいまだ至らざるなり。
されば、ただ今ある所のものをその所において観察すべし。
揺らぐことなく、動ずることなく、そう見極め、そう実践すべし。
ただ今まさになすべきことをなせ。誰が明日死のあらんことを知らんや。
まことに死の大群と会わずと言えるや。
よくかくのごとく見極めたる者は、心を込め、昼夜怠ることなく実践せよ。
かくのごとき者を一夜の賢者と言い、心静まれる者と言えるなり。

―　『祇園精舎の言』より